デジタルマーケティングを
新たな視点で捉え直し、
その可能性の拡大に挑む

国際経営学研究科

Alessandro Comai

研究分野:デジタルマーケティング

INTERVIEW

デジタルマーケティングの研究を深め
日本の発展に貢献する

私は現在、複数のデジタルマーケティングに関する研究プロジェクトを進めています。
そのうちの1つとして日本の高等教育機関、特にビジネススクールにおけるデジタルマーケティングの実施方法について研究を進めています。メインの研究テーマは、学生募集、広報活動、そして同窓会活動を目的としたデジタルマーケティングの活用法に関する調査です。研究の結果、日本のビジネススクールは、デジタルマーケティングのような先進的な手法ではなく、伝統的なマーケティング手法にこだわる傾向にあるということを解明できました。
また、新型コロナウイルスにより、航空運送業界が混乱し、コールセンターが機能しない状況下でソーシャルメディアが混乱の解決にどのように貢献するのかについても研究しました。研究の際、Facebookから約17000件のクレーム投稿を集め、航空会社が投稿にどれだけ応えているのかを分析。その結果、航空会社の対応力はソーシャルメディアの投稿の活発性と有意に関連があり、航空会社の種類により対応の速度に差があることがわかりました。
これらの研究を進めつつ、最近は特に企業におけるデジタルマーケティングの成熟度を測定するためのフレームワーク構築に取り組んでいます。このフレームワークを実社会で活用できれば、企業の成熟度を把握し、緊急で改善を要する組織の弱点の究明に寄与できると考えています。デジタルマーケティングを広義で捉え、その可能性を広げる数々のプロジェクトが進行中です。

デジタルマーケティング分野への
興味が研究のエネルギーに

企業において、その重要度を高めているデジタルマーケティング。その効果については、これまで主にソーシャルメディアやコミュニケーション理論の下で分析されてきました。しかし私は、デジタルマーケティングには、さらなる可能性があると考えています。特定のツールだけに注目するのではなく、幅広い視野を以ってデジタルマーケティング全体の研究を深めようと考えたことが私の原点です。
また、デジタルマーケティング分野のフレームワークが、まだ確立されていないことも研究に取り組む動機として挙げられます。私は、実際の授業でマーケティングコースのデジタルマーケティング分野を担当していますが、そこでは学生に私が作ったフレームワークを提示して、授業を進めています。自分でフレームワークを考え、授業に導入することは、デジタルマーケティングの実践について深く知りたいという思いをより一層強め、研究のエネルギーになっています。

マーケティングで新しい価値を
創造する未来を目指して

今後は、私が取り組んでいるデジタルマーケティングの研究に対して、現在よりもさらに時間を割きたいと考えています。研究を深めることで先ほど述べた近年のデジタルマーケティング分野の研究の可能性を広げることが目標です。
 また、デジタルマーケティングだけではなく、マーケット志向とオープンイノベーションの関係性について研究を展開させることも自身にとっての課題のひとつだと考えています。オープンイノベーションをデザインするための過程として、日本では研究開発を起点にオープンイノベーションがデザインされていますが、西側諸国では、顧客や競合他社のデータからトレンド情報まで外部の様々なデータを収集・分析するマーケットインテリジェンスを活用しているのが主流です。マーケティングだけでなく、すべての部門が市場の変化をよく見て、その情報を業務に生かすことができるのがマーケット志向型組織なのです。マーケット志向からデザインされるオープンイノベーションが、マーケットにもたらす恩恵の解明も重要な目標です。私の研究が、新しい商品、企画を創造するための意思決定に貢献することを願っています。

規模と立地を生かした研究環境で
より濃密な時間を過ごす

国際大学は、主にユニークな立地条件、小規模なキャンパスを特長としており、研究者にとって最高の環境です。特にキャンパスが小規模であることは、本学に在学する多国の学生と多様な問題意識や経験を共有することができるので、在学する人々にとって大きなメリットになると言えるでしょう。実際、本学は南魚沼という立地もあり、学内に住む人が多いので非常に濃密な人間関係を築くことができると感じています。
また、本学のように自然に囲まれたロケーションは、リラックスした環境で研究に没頭することができます。教育についても、ディスカッション形式の授業が多く、教員の方々は授業の準備に時間を要さないので、研究に集中したい方にとっては非常に恵まれた環境です。

国際大学で深い学びを得るために

研究報告であれ論文であれ、研究活動を行う上で学生に、常に大切にしてもらいたいことが3つあります。
1つ目は、自分にとって興味をそそるトピックを見つけることです。これは学生が自分自身の興味に注目し、長い学習の旅を続ける動機付けとなります。
2つ目は、研究するトピックの新しさです。これまで取り上げられたことのない新しい研究にチャレンジすることで、既に解明されている分野をより深めることに貢献できます。
そして最後は、自国の経営者や公共政策立案者に何らかの影響を与える可能性のあるトピックを考えることです。これによって、研究による実践的な知識の習得、研究の付加価値向上に役立ちます。
また、国際大学に滞在する学生は、自分の限られた時間を最大限有効に活用することが何よりも求められます。できるだけ多くのコースに参加するだけでなく、教員や他の学生と交流することが大切です。特に修士課程の学生は、双方向のディスカッションやワークショップに積極的に参加し、より高度な環境で自身の可能性を発揮できる能力を磨いてほしいと願っています。

PROFILE

Alessandro Comai 准教授 [担当科目]マーケティング・マネジメント、マーケティング・インテリジェンス、デジタル・マーケティングとカスタマー・ジャーニー [研究分野]市場志向、ソーシャルメディア分析と可視化、テキストデータの可視化、オープンイノベーション [研究キーワード]Digital Marketing, Market Orientation, Marketing Intelligence, Open Innovation

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